ブランドづくりは価値観の共創(by岩崎邦彦)

 ブランドづくりとは、売り手と買い手が共同して価値観をつくりあげていくことであると、岩崎邦彦教授(静岡県立大学)はいいます(岩崎邦彦『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書』日本経済新聞出版社)。
 商品が持つ特徴を弱みと捉えずに強みと捉える大切さを、岩崎教授「アメーラトマト」の例を挙げて説明します。「アメーラ・ルビンズ」は、直径1〜2cmほどの楕円形のトマトで、ヘタがありません。収穫時にヘタが取れやすいのです。日本では、ヘタの取れたトマトは規格外品扱いとなります。
 ヘタがないトマトは売れないのか。ここで生産者は欠点を逆手に取りました。ヘタがないということは「ゴミが出ない」「弁当に使いやすい」「形状が美しい」「野菜のスイーツのトッピングに合う」という価値をアピールできると考えたのです。
 「アメーラ・ルビンズ」にはもう一つ欠点がありました。発売前の消費者リサーチでは「皮がかたい」という評価が多かったのです。これについては「歯ごたえがある」という価値をアピールできると考えました。そして「噛んだときのパキッという弾んだ歯ごたえ。それは肉厚の食感。歯ごたえのある皮の中に、リコピンカリウム、ビタミン、ギャバなどの栄養が凝縮されています」とキャッチコピーをつけて販売しました。今やこの歯ごたえが「アメーラ・ルビンズ」の売りになっています。
 商品の特徴を強みに換えるお客様の視点でブランドづくりを考える。生産者と消費者をつなぐ新しい価値観の創造が、ブランドづくりの本質であると納得させられます。