農業は「悩業」ではなく「幸せ創造業」(by岩崎邦彦)

 農業は儲からなくて悩み多き衰退産業ではなく、おいしさを感じる体験を通じて幸せを生み出すすばらしい産業だと、岩崎邦彦静岡県立大学教授は言います(岩崎邦彦農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた日本経済新聞出版社)。
 岩崎教授によれば、農産物・食料品の輸出額の多い国は、幸福度も高いという相関があるそうです。農業が盛んな国は、幸せを実感できるということですが、これは直感的にも理解できるでしょう。人が幸福感を感じる最もポピュラーな状況はおいしいものを食べた時です。そうした幸福感の基を創り出す農業は、非常に夢のある産業だと言えます。しかし我が国の現状は、後継者がいなくて衰退業種と嘆かれる状態です。
 岩崎教授は、農業者が生産者目線から消費者目線に転換し、マーケティングの発想をもって商品づくりを行えば、儲かる農業に変わることができると言います。知覚品質の高め方、強いブランドの作り方、六次産業化の成功要因など、稼げる農家に変わるための知恵を詰め込んだ本が『農業のマーケティング教科書』です。タイトルは堅めですが、内容は副題の「食と農のおいしいつなぎかた」のように柔らかくてわかりやすくなっています。
 うまくいかないと悩んでいる農業関係者の方にはぜひお読みいただき、元気と知恵を出してほしいと思います。