マラリア除けの蚊帳でアフリカを救う(by水野達男)

 日本ではあまり聞かれなくなったマラリアですが、今でも世界三大感染症エイズ結核マラリア)の一つであり、アフリカの乳幼児を中心に年間60万人が亡くなる恐ろしい病気です。そのマラリアからアフリカの人々を守りたいと2007年、マラリア対策用防虫蚊帳事業に身を投じたのが水野達男さんです。水野さんは当時52歳で住友化学(株)に勤務していました(水野達男『人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。』英治出版)。
 外資系商社での勤務歴もあり、成果主義の世界でキャリアを積み上げてきた水野さんでしたが、マラリア除けの蚊帳をアフリカに普及させたいと思ったのは、純粋にアフリカの子どもたちを助けたいという動機からでした。住友化学が開発した防虫蚊帳「オリセットネット」は、素材が丈夫なうえ、糸の中に防虫剤を練り込んであり、洗っても防虫効果が落ちない。網目はアフリカの気候に合わせて広めにしてあります。この優れた防虫蚊帳を普及させるために水野さんはタンザニア国内に合弁会社を立ち上げ、製造拠点と販売網を整備しました。さまざまな苦難の末、「オリセットネット」はWHO初の推奨蚊帳としての地位を築き、普及が進みました。
 水野さんは2012年にNPO法人マラリア・ノー・モア・ジャパン(MNMJ)に転身しました。マラリア対策の重要性とノウハウを世の中に広めるためです。60歳を過ぎた今も、水野さんはマラリア撲滅に取組んでいます。人生の折り返し地点で見つけた生きがいに背中を押されて、水野さんは世界を飛び回っています。