『スタートアップとは何か』by加藤雅俊

 我が国のスタートアップを増やすために支援のあり方が議論される中、一石を投じる書籍が岩波書店から刊行されました。関西学院大学の加藤雅俊教授が執筆された『スタートアップとは何か―経済活性化への処方箋』です。

 スタートアップを15年にわたり研究し、NHKクローズアップ現代でスタートアップについてコメントしている加藤教授によれば、スタートアップとは「創業間もない企業」のことだそうです。

 スタートアップといえば、革新的なアイデアを持ち短期間で急成長する企業を指すのが一般的な見解ですが、成長性で区別するのは適切ではないそうです。成長する企業かどうかを事前に見極めることができないからです。

 事実、多くのスタートアップが成長せず、創業後間もなく市場から退出しています。スタートアップには成長する企業と成長しない企業が混在するため、スタートアップと経済成長の関係も明らかではないと加藤教授は言います。

 本書は、スタートアップ支援は長期的な観点で行い、事後的な検証が不可欠であると結ばれています。スタートアップを効果的に支援するには、その正しい姿を直視すべきという真摯なご指摘だと思います。