「持続可能なまちづくり」で上場したスタートアップ企業(by中小企業白書)

 「従業員だけでなく、株主や地域住民を含めた、自社の経営理念に共感する『仲間』を増やして活動の幅を広げる企業」として中小企業庁が注目するスタートアップ企業が神奈川県鎌倉市にあります(2021年版中小企業白書P230事例2-1-5)。

 (株)カヤックは、Web 制作・企画を中心に多角的に事業を展開する企業です。自社を「面白法人」と称し、「面白がって楽しく働く人が世の中に増えれば、世の中がより幸せになる」という思いを表現しました。1998 年に大学時代の友人3人が合資会社として創業。2008 年に資本金が 5,000 万円超、2010 年には従業員が 100 名超となり、2014 年には東京証券取引所マザーズ市場に上場しました。

 「絶えず変化を生み出し続けることのできる組織の形を模索し、株主、従業員、地域と共に、一層面白い未来を描いていきたい」との考えで、株主を仲間と位置付け、株主の紹介による社員の採用、全国縦断投資家説明会、「漫画名刺」を配布するなどしています。株主には理念に共感する個人投資家が多く、柔軟な経営に理解を得ています。地域のステークホルダーと共存共栄したいと、鎌倉近郊に住む株主を増やすことに注力しています。

 同社の事業には、中期的な育成対象と位置付ける「ちいき資本主義事業」があり、人のつながりやコミュニティ、自然や文化といった「地域資本」を指標化し、地域の持続的な成長を目指す支援を行っています。移住と関係人口づくりのためのマッチングサービス(SMOUT)、コミュニティ通貨(まちのコイン)などのサービスを提供。鎌倉市に拠点を置く企業・団体と連携して、保育園、社員食堂、採用説明会などを開く「まちの○○シリーズ」を展開するなど、地域ならではの豊かさを実現する「鎌倉資本主義」にも取り組んでいます。

 こうした持続可能なまちづくりを行うスタートアップ企業が、これからの我が国を支える鍵になると期待されます。