能力・業績主義による格差拡大を正すべき(byマイケル・サンデル)

 グローバリゼーションとともに世界に広がるメリトクラシー (能力・業績主義)が、貧富の格差を広げ、労働への尊厳を損なっていると、ハーバード大学マイケル・サンデル教授が危惧しています(マイケル・サンデル実力も運のうち 能力主義は正義か?早川書房)。

 メリトクラシーは、経済的に成功した者を努力と勤勉の結果と讃え、敗者を努力や勤勉が至らなかった結果と蔑む社会常識を生み出しました。しかし、高学歴を持つ者は富裕層の家庭から、低学歴を持つ者は貧困層の家庭から生まれる偏りがあり、競争条件は平等ではありません。その結果、貧富の格差は拡大する一方で、社会に深刻な分断を生んでいます。

 サンデル教授も指摘するように、デリバティブなどの金融工学を駆使したビジネスが何も生まずに莫大な利益を上げ、コロナ禍で介護や物流、清掃などのエッセンシャルワークに就く人たちが過少な賃金しかもらえない不平等が存在します。労働の尊厳を否定するようなこうした現象も、メリトクラシーが助長しています。

 メリトクラシーを是正し、エッセンシャルワーカーの労働に価値を与えるべき(賃金補助を出すような)というサンデル教授の提言は、社会全体で議論すべき重要な問題だと思います。