コロナ禍を乗り越えてがんばる100食経営

 京都の佰食屋が取り組む100食限定飲食店という経営モデルは、コロナ禍を乗り越えられたのか。気になるところですが、8月21日のカンブリア宮殿では、その様子が伝えられました。

 コロナ禍前の佰食屋は、飛ぶ鳥を落とす勢いで大繁盛し、フランチャイズ展開用の店と、すき焼き店や肉寿司店も開店するほどでした。しかし、コロナ禍で売上が半分以下に激減したことにより、苦渋の決断として、フランチャイズ用の店とすき焼き店と肉寿司店を閉店しました。今は原点に戻り、国産牛ステーキ丼の佰食屋1店舗で経営を続けています。それでも挑戦を諦めていません。

 新たな挑戦としては、100食限定を50食限定にして、それを超える売上があった時は、従業員にボーナスを支払うことにしたことです。これで従業員は、月に数万円のボーナスをもらえるそうです。

 さらに千葉県の石井食品とコラボして、常温で100日間保存できるおにぎりの共同開発に取り組み、「イシイの佰にぎり」として売り出してヒットさせています(46万食販売)。

 コロナ禍を不屈の精神で乗り切り、飲食店の新しい働き方を生み出すことに奮闘する中村さん。その挑戦から目が離せません。

ホワイト労働の飲食店経営に挑戦する女性起業家

 8月21日放送のガイアの夜明けで紹介された中村朱美さんは、京都で飲食店の働き方改革に挑戦する女性起業家です。国産牛ステーキ専門店佰食屋を経営しています。
 佰食屋の最大の特徴は、「1日100食限定、売り切れたら閉店」という仕組み。 このルールは希少性を演出するためではなく、従業員が夕方には帰宅できる働き方を守るために生まれました。仕込み量を100食に固定することで、過剰な仕入れや長時間労働を徹底的に排除し、食品ロスもほぼゼロに。京都市の調査では、食品ロスは1食あたり約1.5gという驚異的な少なさでした。
「家族の時間を大切にしたい」から始まった起業
 中村さんが起業を決意した背景には家族と夕食を囲む時間を取り戻したいという強い思いがありました。教育関係の仕事で多忙だった彼女は、夫とすれ違う生活に疑問を抱き「自分たちが働きたいと思える職場をつくろう」と飲食店の開業を決意。夫が得意とするステーキ丼を看板商品に2012年に佰食屋をオープンしました。
「売上を減らす」勇気──持続可能な飲食店の形
 佰食屋は繁盛店となりましたが、中村さんは多店舗展開を選びません。理由は明確で、「売上よりも働く人の幸せを守る」ため。売上を追いすぎれば営業時間が伸び、従業員の負担が増える。だからこそあえて販売数を絞り、持続可能な経営を貫いています。 この哲学は『売上を、減らそう。』(ライツ社)という著書にもまとめられ、全国で大きな反響を呼びました。
女性起業家としての広がる影響力
 中村さんの挑戦は、飲食店経営にとどまりません。働き方改革やワークライフバランスの実践者として講演依頼が全国から寄せられ、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」大賞など数々の賞を受賞。2025年には文部科学省のアントレプレナーシップ推進大使にも任命され、若い世代に働くことの価値を伝えています。
まとめ:飲食店の未来を変える女性起業家
 中村さんは、「飲食店は長時間労働が当たり前」という固定観念を壊し、働く人も家族も幸せになれる店づくりを実現した起業家です。
 佰食屋の挑戦は「売上至上主義ではなく、働く人の人生を大切にする経営」という新しい価値観を飲食業界に提示し続けています。

小さな会社が生き残るための「ゆるストイック」戦略

変化の激しい時代、小規模企業にとって「頑張り続けること」は以前より難しくなっています。人材不足、情報過多、競争の激化。そんな環境で必要なのは、根性論ではなく、無理なく続けられる経営の姿勢です。佐藤航陽氏の『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)は、そのヒントを与えてくれます。
 本書が提唱する「ゆるストイック」とは、自分の目標には静かにストイック、他人にはゆるく寛容という生き方です。「100点を目指して消耗するより、80点を淡々と積み上げることを重視」する姿勢は、限られた経営資源で戦う小規模企業にこそ向いています。
1. 古い思い込みを捨てる
 経営者が陥りやすいのは「努力は必ず報われる」「全部自分のせい」といった極端な思考です。しかし現実には、努力は「確率を上げる行為」にすぎず、環境要因も大きく影響します。 だからこそ、コントロールできる範囲に集中することが重要です。
2. ニッチを見つける
 小規模企業が大企業と同じ土俵で戦う必要はありません。「好き × 得意 × 需要が重なる小さな領域で戦う」ことが、持続可能な成長につながります。地域密着の強み、特定顧客への深い理解など、独自性は必ず存在します。
3. 完璧主義を捨て、80%で出す
 「完璧主義は行動量を減らす」。これは経営にも当てはまります。新サービスや新しい発信は、まずは80%で出し、顧客の反応を見て改善する方が早く前進できます。
4. 意志力ではなく「仕組み化」
 忙しい経営者ほど「やる気」に頼りがちですが、続けるために必要なのは仕組みです。 ・毎日のルーティンを決める ・ノイズ源(不要な情報)を減らす ・新しい技術に定期的に触れる  こうした環境づくりが、淡々と続ける力を生みます。
5. 試行回数を増やす
 「運のいい人とは試行回数の多い人」。小規模企業こそ、小さな挑戦を積み重ねることで偶然のチャンスをつかめます。月に1つ、新しい提案や発信を試すだけでも、未来は大きく変わります。
まとめ
 「ゆるく、しかしブレずに続ける」ことは、小規模企業にとって最強の戦略です。完璧を求めず、ニッチに集中し、仕組みで淡々と積み上げる。この「ゆるストイック」な姿勢が、変化の時代を生き抜く力になります。

60歳からのIT資格取得に、どんな意味があるのか

 「もう60歳を過ぎたのに、今さらIT資格なんて必要なのか」。そう思う人は少なくありません。しかし、ITパスポート、G検定、DS検定などの資格を60代で取得することには、大きな価値があります。これは単なる資格コレクションではなく、「人生の後半をどう生きるか」というテーマに直結する挑戦です。
1. 変化に適応する力を証明できる
 社会は急速にデジタル化し、AIやデータ分析が当たり前の時代になりました。こうした変化に対して「学び続ける姿勢」を持つことは、年齢を重ねるほど重要になります。 ITパスポートは基礎的なITリテラシーを示し、G検定はAIの仕組みを理解している証明になります。DS検定はデータ活用の基礎力を示す資格です。これらを60代で取得することは、「私は変化を恐れず、学び続ける人間だ」という強いメッセージになります。
2. 仕事の幅が広がる
 定年延長が進む中、60代以降も働き続ける人は増えています。しかし、従来の経験だけでは新しい業務に対応しづらい場面も出てきます。IT資格を持っていると、DX推進の補助、若手とのコミュニケーション、データを使った改善提案 など、従来の経験とIT知識を組み合わせた役割を担いやすくなります。「経験×IT」は、60代だからこそ強力な武器になります。
3. 若手との関係が変わる
 ITに苦手意識を持つ中高年は、若手から「話が通じない」と距離を置かれがちです。しかし、AIやデータの基礎を理解しているだけで、若手とのコミュニケーションは驚くほどスムーズになります。「この人は話がわかる」と思われるだけで、職場での立ち位置は大きく変わります。資格取得は、世代間の壁を取り払う共通言語になるのです。
4. 学び直しは健康にも効く
 脳科学の研究では、新しい知識を学ぶことが認知機能の維持に効果があるとされています。特にITやAIのような抽象度の高い分野は、脳への刺激が大きい。資格取得は、単なるキャリアのためだけでなく、健康投資としても価値があります。
5. 自分の人生に「アップデート」をかける
 60歳を過ぎると「もう新しいことはいいか」と思いがちです。しかし、学び続ける人は年齢に関係なく魅力的です。資格取得は、人生の後半に「アップデート」をかける行為です。「まだまだ成長できる」という実感は、日々の充実感を大きく高めてくれます。
まとめ
 60歳を過ぎてからITパスポート、G検定、DS検定を取得することは、単なる資格取得ではありません。 変化への適応力、仕事の可能性、世代間のコミュニケーション、健康、そして人生の充実。これらすべてを手に入れるための価値ある挑戦です。

「働かないおじさん」問題の真相

最近、「働かないおじさん」という言葉がネット上で頻繁に取り上げられています。大企業を中心に、給与に見合った働きをしていない中高年社員が増えている――そんな批判的な文脈で使われることが多い言葉です。伸び悩む実質賃金への不満が若手社員の間に蓄積していることが背景にあるためとも言われます。しかし、「働かないおじさん」問題には、見落とされている側面があるのではないでしょうか。
実は「働かない」のではなく「働けない」
 近年、ITの高度化によって業務のシステム化が一気に進みました。複雑な処理を大量にこなせるようになった一方で、入力作業やチェック作業など、人手に頼る新しい業務も増えています。こうした作業は、長年、手作業中心の仕事に慣れてきた中高年社員にとっては扱いづらいものです。操作ミスが起きやすく、周囲に迷惑をかける不安から積極的に手を出しにくい。結果として、仕事に没入しづらい状況が生まれてしまいます。
 つまり、「働かないおじさん」というよりも、システム化の波に取り残されてしまった「働けないおじさん」が増えているのが実態ではないでしょうか。
問題の本質はどこにあるのか
 この構造的な問題は、個人の怠慢ではなく、企業の教育・配置の仕組みが変化に追いついていないことに起因します。新しい業務に必要なスキルを学ぶ機会が十分に提供されず、結果として中高年社員が「戦力外」のように扱われてしまう。しかし、彼ら自身も決して働きたくないわけではありません。むしろ、変化に適応するための支援が不足していることこそが、問題の核心と言えるでしょう。
まとめ
 「働かないおじさん」という言葉は刺激的ですが、実態を正しく捉えているとは言えません。IT化の急速な進展により、従来の経験が活かしづらい環境が生まれ、結果として「働けない状態」に追い込まれている人が増えているのです。この問題を解決するには、企業が中高年社員向けの学び直しの機会を整え、役割を再設計することが不可欠です。

路線バスを「走るサウナ」へ―女性社員が出向起業で切り拓いたサバス誕生の物語

 女性社員の熱が、乗客減に悩むバス会社に新たな価値をもたらしました(日本政策金融公庫総合研究所編『新規開業白書2026年版』P121-124、サウナイキタイMAGAZINE「ドキュメント!サバスをつくった人々」)。

 客数の減少が続いていた神姫バス(株)(兵庫県姫路市)は、コロナ禍で客数減少に拍車がかかり、危機感が高まっていました。そんな中、社員である松原安理佐さんが「サウナ×バス」という前例のない挑戦に踏み出し、物語は動き出しました。

 新規事業を考える部署に所属していた彼女は、海外事例をヒントに「路線バスをそのままサウナにできないか」と発想します。しかし、社内の専任は松原さん一人だけ。事業化の道筋も、技術的な前例もない。だから決断しました―「出向起業という形で会社を出て、自分でやろう」。

 出向起業とは、大企業などに所属したまま自ら会社を設立し、その会社へ出向して新規事業開発を行う起業形態です。経済産業省の補助金制度で支援されていました(注:補助金制度は2025年度からJISSUIが引き継いでいます)。

 松原さんは補助金とVCからの出資を受けて2021年5月に会社を立ち上げました。起業後にまず直面したのは「バスが手に入らない」という壁。観光バスではなく、路線バスで実現したい。半年以上待って手に入った一台が、「サバス」誕生の起点となりました。

 そこからは試行錯誤です。サウナ専門業者にサウナ設置を相談しても「温泉施設と同じ性能を保証できない」と断られる。バス会社にもサウナの知見はない。設計を担当した建設設計事務所のスタッフとともに、図面の寸法違い、揺れによる水平のズレ、熱源の安全性など、前例のない課題を一つずつ手作業で解決していきました。

 心強い味方となったのが、神姫バスグループの車両整備会社の整備士たち。廃パーツ置き場から宝物のような部品を見つけ出し、座席レイアウトをサウナベンチに転用し、ウォッシャーノズルをロウリュ用に活かすなど、バスを知り尽くした職人ならではの発想が形になりました。皆が楽しみながらアイデアを出し合い「走るサウナ」を作り上げていきました。

 こうして完成したサバスは、街にサウナを届ける新しい存在であり、サウナのない場所を「サウナのある場所」へと変える価値創造の象徴です。松原さんの「面白そうだからやってみたい」という好奇心と、仲間たちの技術と情熱が結晶したサバス。女性社員の熱が職人たちを動かし、地域に未来への光をもたらしました。

「賢く縮む時代」に小企業が生き残る方法

 人口減少や市場の成熟が進む今、「大きくなること」だけが企業の正解ではなくなっています。むしろ、小さな会社だからこそ発揮できる強みがあります。岩崎邦彦著『小さな会社を強くするマーケティング思考』には「小さいからこそ強い」という逆転の発想が必要だとあります。これは、縮小する時代にこそ求められる視点ではないでしょうか。

 まず大切なのは、大企業と同じ土俵で戦わないことです。消費者が小さな会社に求めるのは、価格や品揃えではありません。個性、地域性、コミュニケーション、そして「ほんもの感」です。数字で測れない価値こそ、小企業が最も輝ける領域です。

 次に、明快なコンセプトと独自性を持つことです。廃業企業の特徴として「明快なコンセプト・独自性」が弱いという調査結果があります。一方、好業績企業は自社の強みを磨き、尖らせています。弱みを改善するより、強みを伸ばすことに力を注ぐ方が成果につながりやすいのです。

 また、引き算の戦略も有効です。品揃えを増やす「足し算の競争」は大企業が有利ですが、何を売らないかを決める「引き算の競争」は小企業の得意分野です。選択と集中が、ブランドの核をつくります。

 さらに、顧客とのつながりを深めることが持続的な成長につながります。岩崎教授の著作には「マーケティングは瞬発力ではなく、持続力である」とあります。口コミ、専門性、地域密着、心への訴求。この4つがリピートを生み、事業を安定させます。

 最後に、経営者自身の幸福度も見逃せません。幸福度が高いほど創造性が高まり、挑戦が続き、事業が長く続くからです。「幸福なスモールビジネスは、地域や社会のロールモデルとなる」という指摘は、まさに縮む時代の希望です。

 小ささは弱さではありません。小ささを強みに変える工夫と挑戦こそ、これからの時代を賢く生き抜く鍵になるはずです。