知られざる創業エコシステムが藤井聡太名人の地元にあった

 今月1日に将棋の史上最年少名人となった藤井聡太さんの地元、愛知県瀬戸市には、創業を次々と生み出すコミュニティがあります。

 2008年からスタートした「せと・しごと塾」は、市役所、商工会議所、大学、地元企業、金融機関などが協力して創業者を支援するスキームです。14年の歴史があり、その実績が蓄積されたことで大きな成果を生み出しています。創業者のコミュニティができ、そのコミュニティが新たな創業者を生むエコシステムができているのです。

 「せと・しごと塾」は、7月~11月の18日間、ビジネスマナーや起業家の心構え、創業の準備の仕方、創業の手続き、税務・経理の知識、販促の仕方などを経営コンサルタントや税理士、企業経営者、大学教授、金融機関職員がグループワークなども交えて実践的に教える創業スクールです。メガバンクに勤務歴のある小坂英雄さん(経営コンサルタント)が塾長となり、14年間一貫して取り組んできました。市役所が中心になって、支援者・支援機関と連携し、創業後のフォローも含めて結果が出るまでやり続けました。

 息の長い濃密な活動の結果、これまでに253名が卒塾し、そのうち148名が創業しています。小坂塾長を核として人的ネットワークが形成され、その中で卒塾生たちは創業後も密につきあい、支え合いながら、瀬戸市を元気にしています。長きにわたる活動は、起業家たちの点を結んで線にして、面となり、立体となり、命が吹き込まれて瀬戸の起業家群という一つの生き物を生み出しました。創業エコシステムのリアルな姿です。

 創業支援が目指すべき理想を体現する瀬戸市の取組みが、藤井聡太名人のように全国に感動を与えてくれることを期待しています。