静岡県の中小企業がトマトでスペインを制したブランド戦略(by岩崎邦彦)

 「日本の中小企業でも、ブランドづくりをしっかり行えば世界で通用する。その実践例が、高糖度トマトをスペインでブランド化した(株)サンファーマーズである」と、岩崎邦彦静岡県立大学教授は語ります(岩崎邦彦世界で勝つブランドをつくる  なぜ、アメーラトマトはスペインで最も高く売れるのか日本経済新聞出版社)。

 トマト祭り「トルティーヤ」で知られるトマト大国スペインに日本のトマトを売り込む。その無謀とも思える挑戦を可能にしたのはブランド化でした。ブランド化の成功により、アメーラトマトは、2021年にITI優秀味覚賞三ツ星を受賞し、スペインでは最も高い価格で売られています。

 2015年のミラノ万博や、ベルリン、マドリードの国際展示会でアメーラトマトが高く評価され、ヨーロッパでは食のブランドがほとんどないことを知り、ブランド戦略をしっかり行えば自社のトマトをヨーロッパでも展開できると、(株)サンファーマーズの社長らは手ごたえを感じました。進出先をスペインと決め、鮮度を保つために現地生産方式を取ることにしてジョイントベンチャーを立ち上げ、モノづくりとブランドづくりを並行して進めました。ブランドアイデンティティを定め、高品質な生産態勢を整備し、現地に合わせたロゴとパッケージを作り、百貨店に販路を開きました。周到な準備に基づいた一連の活動が、ブランド化を成功させました。

 (株)サンファーマーズは、9つの小さな農業法人が集まってできた中小企業です。そうした中小企業が海外でのブランド化に成功した理由は、岩崎教授のようなブランドづくりの専門家と連携したことが大きいでしょう。中小企業は連携すれば強くなると再認識できるすばらしい事例です。