トマト大国のスペインでも日本のトマトは売れる(by岩崎邦彦)

 日本のトマトはスペインでも最高値で売れる。この驚きの成果を静岡の農業者集団(株)サンファーマーズがもたらしてくれました(岩崎邦彦世界で勝つブランドをつくる  なぜ、アメーラトマトはスペインで最も高く売れるのか日本経済新聞出版社)。

 きっかけは、2015年のミラノ万博でした。静岡の生産者がアメーラトマトを出品したところ、消費者からは「こんなに甘いトマトは食べたことがない」「甘みと酸味のバランスがよい。イタリアにもあれば」と好評でした。レストランのオーナーシェフにもアドバイスを求めたところ「そのままで大変おいしく個性的な味わいだから、生で食べたい」「高級食材を扱うスーパーで販売したら」との声をもらいました。

 ベック、イータリーなどイタリアの食品専門店、スペインのトマト産地、フランスの種苗会社などを訪問して調査した結果、大きな発見が3つありました。

「ヨーロッパに『高糖度トマト』や『グルメトマト』というカテゴリーはない」

「ヨーロッパでは、収穫量と生産性の追求により、トマトの同質化が進んでいる」

「ヨーロッパでは、野菜をブランド化しようという発想がほとんどない」

 これらの発見に基づき、ヨーロッパで日本発トマトのブランドづくりに挑戦しよう、ヨーロッパで最高品質の高騰度トマトという新たなマーケットを創造しようと(株)サンファーマーズの社長らは決断しました。その後の苦労を積み重ね、ITI優秀味覚賞の受賞、スペインにおける最高値での販売に結実しました。

 日本の農林水産物・食品の輸出額が今年1~11月で1兆円を突破したと17日に報道されました(日本農業新聞)。年間輸出額の1兆円超えは史上初です。日本の農産物が世界でも通用するというデータですが、アメーラトマトの進撃の例でも、そう感じられるでしょう(注:スペインで販売されているアメーラトマトは日本の技術を用いた現地生産です)。

 日本はまだまだ世界に売り込めるものがたくさんある。自信をもって世界市場に打って出る中小企業が現れることに期待しています。