個人商店の知恵とパワーを生かすFC(コメダ珈琲店)

 名古屋市に本社を持つコメダ珈琲店は、1968年に開業し、今や全国に877店を展開し、売上312億円を上げる珈琲チェーンです。その強みは、それぞれの店舗のオーナーに独立主義が浸透し、店舗ごとに独自のやり方で勝負しているところにあります(「カンブリア宮殿」12月3日放送)。

 東京の渋谷の店舗では、1人客用の席が多く設置され、全席に電源のコンセントが備え付けられ、Wi-Fiの速度が100Mbps(通常の3~5倍)という環境を整備しています。

 吉祥寺の店は、大和証券と連携した店づくりを行い、本棚に投資関連の図書を揃え、テーブル備え付けのタブレットには投資情報が流れています。

 熊本の菊池の店舗では、駐車場で野菜の朝市を開き、店内で英会話やレザークラフトなどの各種講座を開催しています。

 愛知の岡崎の店は、ポップやのぼりを店長夫婦が独自に作成して県内一の物販売上を上げています。

 各店舗の工夫を邪魔しないように、「小さな改革、大きな成果」の考えで、本部は現場に負担をかけない支援を行っています。新メニューとして新宿中村屋と共同開発したカツカリーパンは、従来の材料に新開発したカレールーをかければ作れます。定番のシロノワールも季節ものにマイナーチェンジして提供することで、少ない負担で新味を出せるようにしています。

 消費者に飽きられないよう常に新しい付加価値を生み出すという考えに立ち、FCでありながら個店主義を貫き、地域密着型でリピーターを作る取組みを続けています。最大の強みは、心が軽くなる空気感、毎日来たくなる居心地の良さです。ゆったりとした店内、ふかふかの椅子、木目が目に優しいテーブル、落ち着いた接客など。常連になると好みに応じたメニューが「いつもの」の一言で出てきます。

 他のFCにはない独特の運営を行うため、オーナーの育成にも手間をかけます。新規FC加盟店のオーナー研修は3ヵ月かけて丁寧に行います。他社の3倍の長さです。内訳は、座学8日間(基本理念、接客シミュレーション)、店舗研修52日間(接客・調理の実践、店舗の運営全般、スタッフ教育)、座学2日間(店舗運営)、新店研修14日間(店舗スタッフの指導)です。

 個人商店の知恵とパワーを生かしたFCとして力を発揮するコメダ珈琲店。小企業も情報力と連携力を強化すれば成長できると感じさせてくれます。