政策起業家が作った日本初の障害児保育園

 障害児を預かる保育園を作るという難問に挑戦し解決したのは、政策起業家でした。

 NPO法人フローレンスの代表である駒崎さんは、杉並区の協力を受けて、2014年に医療的ケア児を預かる障害児保育園「ヘレン」を作りました(駒崎弘樹政策起業家―「普通のあなた」が社会のルールを変える方法筑摩書房)。

 児童発達支援事業を使って補助をもらうため、東京都の指定を得る必要があり、都に膨大な資料を提出して交渉を続け、開園5日前に指定を受けました。「ヘレン」には野田聖子議員のお子さんも通い、荒井聰議員が視察に訪れ、医療的ケア児の問題への意識が高まり、「永田町子ども未来会議」が創られました。2016年には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」が可決され、医療的ケア児を支援することが法律に盛り込まれました。

 医療的ケア児が学校に通えるよう、2019年に都知事に働きかけた結果、翌年度から校内管理体制を整備することになりました。

 2021年2月には「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定案」に医療的ケア児基本報酬が新設され、医療的ケア児のための報酬単価が作られました。これで、医療的ケア児を預かる通所施設の採算が取れるようになりました。同年6月、医療的ケア児支援法が成立しました。

 社会の隠れたニーズを拾い上げて政策に反映させる政策起業家の重要性がわかる話です。