政策起業家がこども宅食を全国展開

 コロナ禍でこども食堂からこども宅食への進化を生み出したのは、政策起業家でした。

 NPO法人フローレンスの代表である駒崎さんは「子どもの貧困」に対処するため「わんがんこども食堂」を2015年から始めました(駒崎弘樹政策起業家―「普通のあなた」が社会のルールを変える方法筑摩書房)。

 2017年には、訪問して支援するためコンソーシアムを作って文京区のふるさと納税(寄付)を利用した「こども宅食」を始めました。文京区が困窮者世帯リストに基づいてチラシやリーフレットを配り、一般社団法人RCFが食品営業を行い、NPO法人キッズドアが企業から食品を受け取り仕分けし、(株)ココネット西濃運輸の子会社)が食品を届けます。この仕組みの評価・分析を日本ファンドレイジング協会が行い、一般社団法人村上財団が立ち上げの費用を負担します。事務局をフローレンスが務め、ふるさと納税集めも行います。こうした行政、企業、NPOなどの複数団体が協働して社会課題の解決にあたることをコレクティブインパクトといいます。「こども宅食コンソーシアム」の活動は反響が大きく、それを受けて駒崎さんは「一般社団法人こども宅食応援団」を作り、全国展開を支援しました。

 2019年には「こども宅食サミット」を開催し、文京区長や国会議員を呼んで議論してもらいました。2020年にコロナ禍が起きたことで、こども食堂等の「集まる」タイプの支援は活動停止となり、逆にこども宅食の動きが加速しました。同年5月に「支援対象児童等見守り強化事業」という事業名で政策化されました。「こども宅食推進議員連盟」が結成されました。しかし全国の自治体はコロナ対応で忙しく、動けません。そこで自治体向けにオンライン説明会を行い、サンプル要綱とよくある質問をこども宅食応援団のホームページに掲載しました。少しずつ導入自治体が増えていきました。

 コロナ禍で広がりを見せるこども宅食のブームに火をつけたのは政策起業家でした。アフターコロナのトレンドリーダーとして存在感を発揮しています。