「起業しない理由」にみる正しい創業支援のあり方

 1月17日、日本政策金融公庫総合研究所の「起業と起業意識に関する調査」結果が発表されました。それによると、起業に関心がありながら起業しない人々に理由を聞いたところ、1位は「自己資金が不足している」、2位は「失敗した時のリスクが大きい」でした。こうした結果から、「だから融資や補助金などの資金支援を手厚くするべきだ」という政策的インプリケーションが導き出されることが多いのですが、これは逆でしょう。そのような人たちに融資や補助金を付けても、失敗する創業を増やすだけです。
 成功する起業家は、経営者としての資質(目的意識、事業経営の知識、人脈構築力、資金管理能力、アイデア発想力)を備えています。明確な目的をもって経営の知識を蓄え、人脈を築き、お金を貯め、アイデアを数多く用意します。ですから、起業する時点で十分な自己資金を用意し、失敗した時のリスクを最低限に抑える手を打っています。
 元祖ベンチャー起業家と呼ばれた堀場雅夫氏((株)堀場製作所創業者)は、「自力で3,000万円集められない者に起業する資格はない」と話していました。資金調達が経営の核になるからこそ、厳しい言い方をされたのだと思います。自己資金を満足に用意できない人は明らかに準備不足ですが、それ以前に経営者の資質が備わっていません。そんな人に融資や補助金を支援すれば、廃業率を高める結果に終わるのは当然です。
 創業を支援するのであれば、自己資金が不足している人には、まず資金を十分に貯めるよう指導する。継続することを習慣づけしてやりきる力を育成する。それが、本当の創業支援です。伴走型の支援はそうあるべきでしょう。