政策起業家が作った「おうち保育園」が国策に(by駒崎弘樹)

 今では当たり前となった小規模認可保育所ができた背景には、一人の民間人の全身全霊をかけた努力がありました。

 2008年、NPO法人フローレンスの代表である駒崎弘樹さんは、待機児童問題を解決するために保育園を作ろうと志し、預かる子供が20人以上いないと保育園を設立できないという規制の緩和に挑戦しました(駒崎弘樹政策起業家―「普通のあなた」が社会のルールを変える方法筑摩書房)。

 駒崎さんは「NPO法人等を活用した家庭内保育の試行的事業」を厚労省に提案して少人数を預かる「おうち保育園」を2010年に開園しました。すると「空き住戸を活用したミニ保育園、待機児童のメッカに誕生!」とメディアに取り上げられました。これが、当時の「子ども子育て新システム」という法案に「小規模保育」という文言を入れることになり、「子ども・子育て支援法」成立に至り、小規模認可保育所が制度化されました。下町の外れで生まれた「おうち保育園」が国策になりました。

 さらに駒崎さんは「全国小規模保育協議会」を立ち上げて理事長となり、政府の子ども子育て支援会議の委員に任命され、小規模認可保育所の全国展開を進め、2015年には1600カ所に拡げました。

 真に必要な規制緩和は、一人の民間人でも周りの協力を得て実現できると勇気を与えてくれる事例です。