「生産性を上げるには、メンバーを孤立させないこと」(by矢野和男)

 組織の生産性を高めるには、組織内に孤立を生まないことだと、ビッグデータ解析の専門家である矢野和男さんは言います(矢野和男予測不能の時代: データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ草思社)。

 矢野さんが調べた、あるコールセンターの事例です。パートタイムの従業員が多いその職場では、マニュアル通り顧客候補に電話をかけ、1時間あたり何件注文を取ったかで成績が評価されていました。全体の受注率が、人が入れ替わる中で日々大きく変動していましたが、その原因は個人の能力差ではなく、孤立でした。

 孤立が発生する状況はこうです。組織の中で誰かが独占的に人とのつながりや影響力を持つ結果、人とのつながりの数や他の人への影響力が少ない人が生まれます。その人は、組織の中で情報の獲得も少なくなります。このつながりの少なさが孤立を生みます。質問しにくい、話しかけにくい雰囲気となり、会議の時以外には会話しにくくなります。会議で発言しても、周りの人たちはうなずいてくれず、元気を奪う反応しかしません。会議の発言権は誰かに占有されており、自分から話しにくくなっています。

 この分析結果から、孤立をなくすようにスーパーバイザーが意識して声掛けを徹底したところ、受注率が上昇したそうです。

 矢野さんは言います。「人が孤立を最も感じるのは、人と一緒にいる時。人と一緒なのに、自分が関心を持たれず、応援されず、信頼されず、元気を奪われるような反応ばかり受けることで我々は孤立を感じる。孤立した人がいる状況では、全員のパフォーマンスが低下する」と。「孤立は、孤立した人が悪いのはなく、組織の病である」という指摘は、チームワークが分断されて生産性が低迷している企業にとって重要な警鐘だと思います。