7人の子を育てながら町工場をカイゼンする女性起業家

 「女が工場をちょろちょろしてんじゃないよ」とどやされながらも、7人の子供を育てながらも、町工場をカイゼンしたいと奮起して起業した女性がいます。2018年に埼玉県川口市で創業したNANASE(株)石田七瀬社長です(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.168 P18-21「危機に瀕する製造業界でかけ橋になりたい」)。

 同社は、600社以上のネットワークを使って町工場間の発注をデジタルマッチングしたり、工場内の環境改善をコーディネートしたり、採用・人材育成・営業・納品の代行もしています。海外メーカーとの競合やAI化の波に苦しむ町工場を助けたいとの思いで事業に取り組んでいます。

 石田社長は自動車メーカーに勤務していた時、産業機器をつくる町工場に配属され、購買を任されました。まったく知識がなく、見よう見まねで勉強し、協力会社にも教えを請いながら、体当たりで交渉しました。悪戦苦闘の末に、1週間かかっていた納品が即日発送できるようになり、最大80%のコストダウンもできて、万年赤字だった購買部門が黒字化しました。さらに、協力会社から発注先の紹介を求められるようになり、紹介したこともありました。そうして勤務先の工場や協力工場を支援しているうちに、町工場を支援するビジネスが必要なのではないかと気づき、起業するに至りました。営業、設計、品質管理の経験がある夫も、勤務先を退職して石田社長をサポートしてくれました。

 同社は2019年に第1回ウーマンビジネスプランコンテスト大賞(川口商工会議所女性会主催)、2020年に第15回さいたま輝き萩野吟子賞さわやかチャレンジ部門賞(埼玉県主催)、第6回女性起業チャレンジ大賞準グランプリ(一般社団法人日本起業アイディア実現プロジェクト主催)を受賞しました。日刊工業新聞日本経済新聞にも取り上げられるようになり、受注が拡大しました。

 ダブルワーク中の子育てママも3人雇用し、働く女性の支援もしています。

 ポストコロナに大きく躍進しそうな、みなぎる女性パワーを感じます。