愛知県警が先導する「働き方改革」

 人口ボーナス期から人口オーナス期に転換した日本は、働き方改革に真剣に取り組まなければならないと、小室淑恵(株)ワーク・ライフバランス社長は言います(小室淑恵働き方改革毎日新聞出版)。
 生産年齢人口の増加が経済成長をもたらしていた人口ボーナス期は、男性ばかりで長時間働き、それを均一に管理していれば成功しました。しかし人口オーナス期では、男女が効率よく働き、多様な人材を揃えることが成功の条件になります。そのために働き方改革を行わなければならないのです。
 小室社長は著書『働き方改革』の中で、働き方改革によって生産性とモチベーションを向上させた事例を20上げていますが、その中に愛知県警があります。
 愛知県警は、2015年度から全国の都道府県警に先駆けて働き方改革に取組みました。規模の大きな警察署から2カ所を選び、それらの捜査部門と会計部門で朝メール・夜メール(1日の予定と実績をメンバー全員で共有すること)を用いて現状を確認し、働き方の効率化策を話し合うカエル会議(カエル=働き方を変える、早く帰る、人生を変える)を行い、業務を見える化して効率化の取組みを進めました。宿直明けの人はストラップを着用してわかるようにして周りから早帰りを声掛けし、捜査の進捗状況をパソコン上で共有して役割の重複を排除し、拾得物の保管方法を誰でも探せるように見直し、ベテラン警察官の情報や捜査ノウハウをマニュアル化しました。こうした改革の結果、残業時間を60%以上削減したチームが現れ、長時間労働を見直す意識が組織全体に広がりました。業務効率化の取組みは、毎年、続けられています。
 働き方改革の肝は、改革の必要性をトップが強く認識し、業務を見える化して効率化の試行錯誤を続けることです。愛知県警がその動きを先導されたことは、多くの企業にとって励みになるでしょう。