長時間労働を正す生産性向上(by伊賀泰代)

 「長時間労働を是正するために働き方改革が言われているが、その実現のためには生産性を向上させなければならない」と、マッキンゼー出身のキャリア形成コンサルタント伊賀泰代さんは言います(伊賀泰代生産性−マッキンゼーが組織と人材に求め続けるものダイヤモンド社)。
 長時間労働を問題とする捉え方は無理な時短を進めるだけ、本当の問題は、日本企業の生産性が低いことであり、その改善に取り組まなければならないという指摘はもっともです。
 生産性は「アウトプット÷インプット」であり、生産性を上げる方法として改善(インプルーブメント)と革新(イノベーション)があり、それらを実現するためには人材育成が必要、と伊賀さんは説きます。人材育成においては、時間生産性を意識させることが重要と強調されていますが、この部分は日本企業の人材育成で忘れがちなところでしょう。これができていれば、長時間労働は存在しないはずだからです。
 日本人は職人気質をよしとし、下積みからの努力の積み上げや一子相伝を理想化していましたが、これからの時代は意識を変えて、ITの活用や情報共有による時間生産性の向上に取り組むべきでしょう。新しい時代の働き方を考えるうえでとても参考になる著作です。