『儲かる中小企業 人手不足に負けない111のポイント』(by中小企業庁)

 人口減少時代を迎え、人手不足に悩む中小企業はどうしたらよいか。その解決策を示唆する著書を中小企業庁が発行しました。『儲かる中小企業 人手不足に負けない111のポイント』(日経BP社)です。
 同書では『中小企業白書2018年版』『小規模企業白書2018年版』で紹介された、働き方改革やIT化などを進めて人手不足を解決した111の事例が掲載されています。高齢者や女性が働きやすい職場の作り方、インターネットの活用の仕方などが具体例に基づいてわかります(16事例が詳説、95事例は概説)。
 事例79で紹介されている熊本県シタテル(株)は、インターネットを使って日本初の衣服生産プラットフォームを構築したベンチャー企業です。総合商社、繊維商社、アパレルメーカー、卸問屋、仲卸、小売店、縫製工場などが複雑に絡み合う業界において、服をつくりたい個人や企業と、全国の縫製工場をインターネットで直接結び付けることに成功しました。これにより生産のリードタイムが革命的に短縮され、多くの新規需要を生み出すとともに、全国の縫製工場の人手不足に貢献しました。
 事例81で紹介されている秋田県の『珈琲とパンの店 美豆木(みずき)』は、小企業の事業承継の事例です。岩手県でパン屋を開業したいと物件を探していた人物が、故郷の秋田県の喫茶店オーナーが後継者を探していることをインターネットで知り、喫茶店を引き継ぐことで手作りパンを提供できるようになりました。事業承継の方法を知らなかったため、商工会議所に相談し、県の事業引継ぎ支援センターを紹介されてアドバイスをもらい、スムーズに引継ぎができました。後継者のいなかった喫茶店が、インターネットや支援機関の力で他県から後継者を招き入れることができた例です。
 人口減少に立ち向かう111の知恵が盛り込まれた同書は、多くの中小企業や支援者の参考になるでしょう。