低生産性は個別企業の問題ではない(by中小企業白書)

 我が国の経済を低迷させている低生産性の原因は個別企業の問題ではない、と中小企業庁が発行する報告書が主張しています。

 2020年版中小企業白書(Ⅰ-P100~106)では、企業規模・業種別の労働生産性を分析し、『業種全体として労働生産性の水準が低い「宿泊、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「小売業」などでは、個別企業の経営努力や企業規模の拡大のみによって、労働生産性を大幅に向上させることは容易ではない可能性も示唆された』としています。

 個々の企業の問題ではないものの、業界全体が供給過剰であるために過当競争になり、結果として低生産性にならざるをえないという主張は、だから中小企業を整理統合すべきだというデービッド・アトキンソン氏の結論を裏付けているように見えます。しかし、中小企業の整理統合を目的として政策を進めることは容易ではないでしょう。最低賃金の引き上げだけでは難しいように見えます。

 むしろ中小企業の弱みとされる情報力と連携力を強化し、企業本来の活動を活性化する支援を通じて、自発的に小規模M&Aが進むような流れを創るべきでしょう。低生産性に陥った中小企業が、痛みを感じない形で経営資源を引き渡せる商慣行を常識にすることが必要だと思います。