サービス業の生産性を高める大事な前提(米子市)

 サービス業の生産性を高めることが日本経済復活のカギであると言われ、各種の提言がなされています。小出宗昭f-Bizセンター長の言う「伴走型支援」(企業の美点を伸ばすよう継続的にフォローする)、冨山和彦経営共創基盤代表の言う「ベストプラクティスの共有」(他地域の良好事例を参考にする)などもそうでしょう。しかし、これらだけではまだ足りない気もします。
 日本経済の根本的な問題は、供給過剰・需要不足の状態にあるため、供給側をどれだけ強化しても新たな需要が生まれない限り、経済の好循環が起こらないことです。そのため需要を生み出すような産業や企業が待望されています。この部分を政策的に誘導する必要があるのではないでしょうか。
 地域に新たな需要を生み出すにはどうしたらよいか。これまでの常識は「企業を誘致する」が定番の答えでした。ところが企業誘致はうまくいかないという経験値を積み上げることとなりました。かけたお金ほど地域に需要を生まないからです。そこで、発想を転換してはどうでしょうか。域外に流出するお金が域内に流れるよう、地域の構造を変えるのです。そんな奇跡的なことが米子市では可能です。
 車過剰社会である米子市の乗用車の世帯保有率を全国平均並みに下げれば、年間で60億円以上は車にかかる経費を浮かせられます。これを市内消費に向ければ、プレミアム商品券を毎月、財源の心配なしで発行するのと同じ需要創出効果が生まれます。車過剰依存を変えられるのかという疑問への答えはYESです。米子市は132k㎡というコンパクトなまちで、その中に大学病院などの医療機関、百貨店やコンビニなどの商業施設がひしめいています。周囲を大山、中海が囲み、大自然も満喫できます。市内で暮らすだけなら、自家用車は不要です。車に過剰に依存するライフスタイルを見直せば、市内の金回りは格段に向上します。
 米子市は生産性を革命的に高められる基礎的な条件が揃っていることを多くの市民が認識して、ベクトルを合わせれば、米子市に新たな需要が生まれ、サービス業の生産性は劇的に高まるでしょう。それがモデルとなって、全国の地方都市の生産性が高まっていくことに期待しています。