「獺祭」にみる不屈の経営者魂(山口県)

 経営とは、常に逆境に身を置きながら、必死の思いで活路を見出そうとする行為ではないか。お手頃価格の純米大吟醸酒「獺祭」で起死回生を図った旭酒造の桜井博志社長の生き様は、まさにそんな挑戦の歴史です(桜井博志『逆境経営』ダイヤモンド社)。
 過疎地にある酒蔵を継いだ桜井社長は、値引き販売や紙カップ入り酒を販売したり、大吟醸酒を作りそこねたものを生酒として売り出したり、ワイン酵母を使った純米吟醸酒を売り出したりして試行錯誤を重ねながら、通年醸造(冬場以外でも同じ条件にして酒造りを行う)という方法に到達し、杜氏に頼らず社員だけで純米大吟醸酒をつくり出すことに成功しました。この途中では、地ビール事業に失敗して大きな借金を背負い、倒産の危機に瀕したこともありました。それが今では、純米大吟醸酒の売上では全国トップになり、世界20ヵ国で販売するまでになっています。
 数多くの失敗経験を経て活路を見出した桜井社長には、多くの小企業経営者が励まされることでしょう。