社会的弱者の長所を生かす企業経営

 過剰に同質化した日本社会は異物を嫌います。平均から外れた性質を持つ人材は、劣っているとされて排除されます。こうした不寛容が閉塞感を生み、社会を停滞・弱体化させています。社会の元気を取り戻すには、とんがった性質を持つ人材を認め、その良さを発揮させることです。

 障害者の注意力や多動力、女性の感性やバイタリティー、高齢者の忍耐力や忘却力など、それぞれの人材が持つ長所を生かして集団を活性化する。互いの足りない部分は助け合って補い合う。そうした取組みが企業経営にも求められています。

 愛知県でネットアーツグループを率いる齋藤秀一社長は、自らが持つ発達障害の強みを生かして社会貢献したいと考えました。そして障害者の働く場を確保するために米作を行う会社を興しましたが、そこで採れた米粉バウムクーヘンを作り、販売するショップを10カ所に広げ、女性が働く場を確保しました。今はグループ内のシステム開発会社にいる高齢のIT技術者を米の生産管理に活用することを考えています(齋藤秀一『発達障害でIT社長の僕』幻冬舎)。

 人々は助け合うことで強くなりますが、企業の強さの根源もここにあります。その意味で、社会的弱者の力を合わせて社会に貢献する齋藤社長の挑戦は、企業経営の王道を行くものとして高く評価されるべきと思います。