人に優しい大家族的経営で150年続く中小企業(新潟県燕市)

 創業150年の歴史を持ち、フィンランドのサンタクロース村から公認された除雪機を作る中小企業が、フジイコーポレーション(株)(新潟県燕市)です。人に優しい大家族的経営で知られ、高齢者、女性、障害者、外国人にも働く場を提供しています(坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社7』あさ出版)。

 同社は1865年に農機具の製造から出発し、今では除雪機で世界的に知られるようになりました。世界19ヵ国への輸出実績があります。

 障害者の就労比率が高いですが、性別、国籍に関係なく、平等に社員を雇用するダイバーシティ経営を実践しています。高齢者の知恵を活かした溶接システム開発や女性・外国人の広報戦略で海外売上高を1.5倍にしたことで、経済産業省の「平成25年度ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれました。

 ほかにも、地元の障害者施設にいる障害者が書いた絵画をエントランスの壁一面に飾り、障害者施設で作っているケーキや焼き菓子を3ヵ月ごとに購入し、出張先企業への手土産には障害者施設の製品を持参しています。

 工場も人に優しい作りになっています。段差のないバリアフリー仕様にして、配線類や作業工具は天井に上げて床に置きません。地震等の際に社員がケガをしないよう、140cm以上の高さにものを置かないルールを定めています。フォークリフトは、排気ガスの問題と暴走事故の可能性があることから使っていません。あえて人手がかかる台車で間に合わせています。

 毎年8月の夏休みには、親子で仕事体験ができる「ぅわ~きっず」を開催しています。小学校3~6年生の子供たちと保護者が除雪機づくりを体験するイベントで、そこで製造した除雪機は海外に輸出されます。若者の県外流出が激しい新潟県で、地域のものづくり企業の良さを子供たちに知ってほしいとの思いが込められています。

 同社は年間500人以上の視察者を受け入れており、累計では4,000人以上に上ります。これまで多くの企業や人々に支えられてきたことへの恩返しで行っているそうです。

 同社の人に優しい経営が、全国の中小企業経営者にも人肌のあたたかさを届けることを願います。