地域の「孫」になりたいと宅配菓子屋を創業(千葉県長南町)

 愛する地元でお年寄りたちを支えて地域を元気にしたいと創業した女性がいます。千葉県長南町「宅配菓子屋ほのや」を営む荒井美乃里さんです(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.169 P16-19「地域の魅力を配達する菓子屋」)。

 長南町は千葉県の中央にあります。人口はピーク時には11,640人(1985年)でしたが、過疎が進み、8,000人を切るまでに減りました。一人暮らしのお年寄りが増え、地域の交流も途絶えがちになり、町の元気が日に日になくなっていく状態でした。そんな町を元気にしたいと、荒井さんは令和元年(2019年)に宅配菓子屋を創業しました。

 紅花もなか、ぜんざいもなか、ボトルクッキー、手折りアップルパイ、ホールタルト、ぽんおこしなど、お年寄りの女性に喜ばれる商品を宅配しています。東京の調理師専門学校で学び、同じ都内の老舗和菓子店で修業した菓子職人荒井さんの作るお菓子は、折り紙つきのおいしさです。主力商品の紅花もなかは、町の特産品の紅花と小豆を使ったもので、ぜんざいもなかは昔、町にあった和菓子店の人気商品を復刻したものです。どちらも町の特色を感じられる商品です。荒井さんの実家である米農家で育てた米を自家製粉した米粉も材料に使っています。

 商品づくりは、実家の空き部屋を改装した工房で行います。電話やファクシミリ、LINEなどで注文を受けて、商品を配達します。お客さまには一人暮らしのお年寄りが多く、配達した際に「孫」のように世間話をして喜ばれています。

 荒井さんの地域おこしには、多くのサポーターがついています。商品づくりは千葉県よろず支援拠点が、経理長南町商工会が、コラボイベントは町内の古民家カフェなど事業者10名がサポートしてくれます。

 過疎の町で「孫」として地域を元気にしたいという荒井さんの活動は、これからも多くの支援者を得て広がっていくでしょう。