不透明な時代を生き抜く年輪経営(長野県伊那市)

 ワタミ、イオン、マクドナルド、ゼンショーホールディングスなどのように、一時期、経営が絶好調で注目されていた企業が、ふとしたはずみに不調に陥るケースが多く見られます。今の時代、勝ち続けることがいかに難しいかを物語る事例ともいえるでしょう。
 そんな変化の大きい時代に、地を這うような低成長を続け、48年間増収増益となった企業があります。『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本光司著、あさ出版)でも取り上げられた、伊那食品工業(株)です。
 同社は長野県伊那市にある寒天メーカーですが、寒天製造という構造不況業種にありながら、半世紀近く地道に成長を続けました。その秘訣が無理な成長を追わない年輪経営です。100年カレンダーを作り、長期的な視野に立って研究開発を続け、新商品を投入し続けることで新たな市場を開拓してきました。寒天を使ったお菓子の開発に始まり、健康食品、化粧品、はては医薬品の分野にまで寒天の用途を拡げました。
 「いい会社をつくりましょう」を合言葉に、社員を大切にする経営を貫いた同社は、2014年までの20年間に、会社が嫌で退職した人はいないそうです(『リストラなしの「年輪経営」』塚越寛著、光文社)。
 業歴の長い企業ですが、その経営は、これからの時代を生き抜くためのヒントに満ちています。