「世界最速工場」を掲げて時間価値を追求するばね製造業(浜松市)

 「時間」という価値を提供することに特化してコロナ禍を生き抜く中小企業があります(坂本光司もう価格で闘わない-「より安く!」は誰も幸せにしないあさ出版)。

 沢根スプリング(株)静岡県浜松市)は、ばねや関連製品の総合メーカーです。社員53名、年商8億円、1966年の設立から毎期黒字です。

 同社は「ストックスプリング」という自社通信販売サイトを運営しており、特注品も含めて、ばね1本から注文を受けて、17時までの注文には即日発送します。品揃えは5,000種類を数えます。

 「世界最速工場」というミッションを社員に浸透させ、「時間」という価値を追求しています。顧客は440社、そのうち売上比率が1%未満の会社が400社以上あり、顧客と対等の立場で取引できるようになっています。

 同社は30年かけて脱・下請けに取り組んできました。「考え・つくり・売る」を大切にして、量産品の自動車部品から小口・スポット品の通信販売へと事業領域を変え、今は2030年ビジョンを掲げて医療用部品の分野へと進出しています。経営理念に①会社を永続させる、②人生を大切にする、③潰しのきく経営を実践する、④いい会社にする、⑤社会に奉仕する、を掲げ、「腹八分目経営」に徹して「楽しいものづくり」を実践しています。

 時間価値を追求するために経営に余裕をもつ、そのために長期ビジョンと経営計画を策定する。同社の取り組みは、多くの中小企業が参考にすべき経営の基本だと思います。