不利な立地を逆利用したスイーツ店(by小山進)

 日本を代表するパティシエ小山進さんの店エスコヤマは、兵庫県三田市にあります(小山進丁寧を武器にする祥伝社)。1,500坪の敷地内にはテーマ別に6つの店舗があり、スイーツのテーマパークとなっています。スタッフは220人に及びます。看板商品の小山ロールは1日1,600本売れ、年商は18億円になります。開店前から長い行列ができ、来客は一日中途切れることがありません。現在の盛況を見れば、なるべくしてなったようにも見えますが、小山さんが開業する際に作った事業計画には多くの人が反対しました。立地が悪かったからです。
 三田市ゆりのき台は、2003年の開業当時、原っぱしかありませんでした。最寄り駅にも車を使わないと行けません。なぜこんな場所でケーキショップを開くのか、誰からも理解してもらえませんでした。立地診断を行う会社に審査を依頼したところ、1日の来客8人で日商8,000円、経営者の資質なし、再就職先を探しなさいとの報告書をもらったそうです。
 しかし小山さんは、山が見え、川がある、こののどかな田舎の風景こそ自分が求めていたものだと考えました。立地診断会社の反対意見も、好材料と捉えました。今はすべてが足りている時代であり、人と同じことをしていては成功しない。駅近くにある繁華街の好立地に出店するというセオリーはもう通用しない。交通の利便性を重視するよりも、心の利便性を重視すべきだと考え、家族で野山に遊びに行くような感覚で利用できる店を作るために三田市での開業を決めたのです。開業資金は自己資金と国金(現在の日本政策金融公庫)、そして地元金融機関から調達しました。
 その結果はというと、今の大盛況となっています。
 足りている時代に求められるものは心の利便性という気づきで事業計画を立て、立地の不利を逆に活用する。多くの小企業に元気を与えてくれる話です。