「こうして組織は腐敗する」(by中島隆信)

 生産性の研究で著名な中島隆信慶應義塾大学商学部教授の新著「こうして組織は腐敗する」中公新書ラクレ)が6月7日に刊行されました。
 おそらくは出版社側の都合と思われますが、タイトルは煽情的になっています。ですが、中身は非営利組織のガバナンスについて真剣に考察されたもので、スリリングです。
 営利というわかりやすい目的をもたない組織はどのように統治されるべきか。この問題意識は現代の我が国において特に重要だと思います。なぜなら、経済成長が頭打ちとなり、今以上の経済水準が望みにくい中で、非営利組織による社会活動はますます重要性を帯びているからです。その反面、NHKに代表されるような不祥事が報道されることもたびたびあり、ガバナンスのあり方が問われていることも事実です。
 同書では、1・2章で非営利組織の誕生と運営を理論的に解説し、3〜6章で大相撲、お寺、学校、障害者施設のガバナンスのあり方を論じています。大相撲のガバナンスについては、著者自身が日本相撲協会「ガバナンスの整備に関する独立委員会」の副座長を務めたこともあり、大相撲の内部事情を絡めて精緻に論じられています。それ以外のテーマも著者に関連のある分野であり、詳細に論じられています。
 非営利組織とガバナンスはこれまで関連付けて語られることがなかったと思います。先鋭的な問題提起であり、一つの研究分野が確立されるのではないかと予感しました。