小説が教える「創業するなら公庫へ」(by菅井敏之)

 新たに事業を始める、つまり創業する場合、最も頭を悩ますのが資金調達です。自己資金で足りない部分をどう補うか。銀行から借りればよいと考えるところですが、営業実績のない事業に民間金融機関が融資するのは容易ではありません。そんな時に頼れるのが政府系金融機関日本政策金融公庫です。
 三井住友銀行の支店長を務めた菅井敏之さんが著したエンタメビジネス小説『読むだけでお金の増やし方が身につく 京都かけだし信金マンの事件簿』アスコム)では、ともすれば重い話になりそうな融資現場の実態が、さわやかな筆致で描かれています。その中で、担保も保証人も出せないが融資を受けたいという若者の創業相談を受けた信金マンが、信用金庫では融資できないため日本政策金融公庫を紹介、それによって若者起業家が融資を受けられたエピソードが語られています。著者の銀行員時代の体験を踏まえているそうで、リアリティがあふれています。章題の「資産がなくても融資は通る! 日本政策金融公庫を使い倒せ!」というのは、創業者が資金調達を考えるならまず公庫からというポジティブな意味です。
 今年発表された中小企業白書(P251-251)と小規模企業白書(P201-202)では、日本政策金融公庫の創業融資の実績が紹介されています。年間で2万6千件を超え、2千億円近い融資を実行しています。日本政策金融公庫は我が国最大の創業融資機関です。民間金融機関を補完する役割が法律で定められており、地域の民間金融機関(銀行、信用金庫、信用組合)と連携して融資を行っています。創業時に公庫を利用し、軌道に乗ったら公庫の紹介で民間金融機関を利用する方もいます。
 日本政策金融公庫では、創業に関する無料電話相談も受けています(創業ホットライン)。「創業を 考えるなら まず公庫」ということを多くの方に知ってほしいと思います。