AIにも限界はある、銀行員は自信をもとう(by尾木研三)

 2014年にオックスフォード大学の研究者が、コンピューター化の進展で人間が行う仕事の約半分が失われると発表し、話題になりました。その中に「銀行の融資担当者」の仕事も10〜20年以内に高い確率でなくなるとあり、金融関係者に衝撃を与えました。金融の本質な部分である融資判断を、機械(AI)が代替できると予言していたからです。
 囲碁の世界チャンピオンがAIに敗れるのだから、銀行の融資担当者がAIに敵うわけがないと誰もが思いがちです。しかし、それは誤解です。
 企業を対象にした事業資金の融資判断には、情報の非対称性と未来予測の不可能性の問題が含まれます。必要な情報が事前にすべて与えられるわけではありませんし、未来がどうなっていくかという不確実性も織り込んで考えなければなりません。持ち駒と打ち方のルールが定まっている囲碁や将棋とは違うのです。計算すれば正しい解答が出るというものではありません。AIであっても決して正確な判断ができるわけではないのです。
 5月に発売された、日本政策金融公庫の尾木研三さんの著書『スコアリングモデルの基礎知識 中小企業融資における見方・使い方』金融財政事情研究会)は、その辺を詳しく解説しています。
 銀行員はAIに負けません。自信をもって企業支援に取り組んでほしいと思います。