コロナ禍で起きる金融業界の地殻変動(by橋本卓典)

 「コロナ禍で最も危惧されることは、大きく傷ついた中小企業の行方だ。いずれ事業者は既存債務に加え、ゼロゼロ融資(長期の元金据置ができる実質無利子・無担保融資)の元本返済がさらに負担となる。本腰を入れた企業支援が必要となる」と、ベストセラー『捨てられる銀行』シリーズの著者である橋本卓典氏は言います(橋本卓典『捨てられる銀行4 消えた銀行員 地域金融変革運動体講談社現代新書)。

 橋本氏は、最新刊の『捨てられる銀行4』で中小企業の事業再生に特化した「中小企業版産業再生機構」の必要性に触れています。これは、債権買い取り、出資・倒産手続き中の企業に運転資金を出すDIPファイナンスや経営人材の派遣、金融機関同士の調整、抜本再生、地域の事業者同士が経営統合した場合の税制優遇やリース債権の買い上げ、特定業種資産の買い上げ、ゼロゼロ融資を株式に転換するDESを実行する組織のことです。

 ここまで深い事業再生にも踏み込みながら、地域のネットワークを活かして本業支援に取り組んでいく金融機関が生き残るというのが氏の主張です。優れた本業支援の事例として、地域金融変革運動体のメンバー(諏訪信用金庫琉球銀行山梨県信用保証協会、沖縄銀行荘内銀行山形銀行北門信用金庫)の活動が紹介されています。

 アフターコロナに向けて金融機関にも大胆な変革が求められる今、多くの金融機関から変革者が現れて次世代のビジネスモデルを展開していくことを期待しています。