伴走型支援のお手本!尾張旭市商工会8年間の奮闘

 9月3日、名古屋駅前のウインクあいちで開催された愛知県商工会連合会主催の経営支援事例発表大会で、尾張旭市商工会の支援事例が最優秀賞を受賞しました。この事例は伴走型支援のお手本といえるものです。

 有名ホテルで調理師としてキャリアを積んだ男性が、自分の店を持ちたいと考え、2012年に尾張旭市でカフェを創業し、商工会に加入しました。商工会は当初、帳簿の作成や決算申告の指導を行いましたが、さらに進んだ指導の必要を感じました。創業時の売上目標は年商2,400万円でしたが(初年度の達成率は6割)、目標達成には大きな壁が立ちはだかっていたからです。

 売上を伸ばすうえでネックとなっていたのは、目立たない立地にあり、認知度が低いことでした。そこで商工会が新規顧客獲得の方法を指導し、地域の情報誌に広告を掲載したり、商工会の会員無料HPでPRしたり、メニューを改良したりしました。メニューの改良は、女性客をターゲットとして、モーニングセットを1種類から3種類に増やして選べるようにし、ランチメニューも値上げして旬の野菜を使ったものにしました。こうした努力の積み重ねが実を結び、創業4年目に年商目標を達成しました。

 次の目標として、売上をさらに伸ばすことを考え、テイクアウト事業を始めることにしました。これはSWOT分析を行った結果、手作りスイーツの人気が高いこと、バースデーケーキ・クリスマスケーキの問い合わせが多いこと、オードブルを販売してほしいとのニーズが強いことから気づきを得ました。しかし調理スペースが狭いため、テイクアウト事業の許可が出ないという課題もありました。そこで商工会が専門家を派遣して、テイクアウト用メニューを開発し、厨房の改装も行うことにして経営革新計画の承認を受けました。ところが入居している建物の取り壊しが決まり、この計画は頓挫しました。あらためて専門家によるプロジェクトチームを結成し、年商3,000万円の目標と店舗移転の計画を創り上げ、2020年6月から新店舗での営業開始にこぎつけました。

 8年間にわたり多くの試行錯誤を乗り越えて、新店舗で新たなチャレンジを行うことになった男性を支えてきたのは、商工会の経営指導員によるアドバイスでした。地道に丁寧に指導を続けることで、地域の小企業の繁栄をお手伝いする。地元の産業振興を担う商工会の役割が発揮されています。こうした伴走型支援が今後も新たな成果をもたらすことを期待しています。