「捨てられない銀行」になるために

 金融庁の方針の大転換を示した『捨てられる銀行』(橋本卓典著、講談社現代新書)がベストセラーになっています。不良債権処理の促進を目的とした銀行の資産査定の厳格化から、銀行が地元企業の本業支援に力を入れるように監督を強化する方向へと、金融庁が行政方針を転換したというのが主な主張です。担保保証頼みの低利融資で規模を拡大する銀行経営では、顧客の支持を得られない。そんなことをしている銀行はいずれ「捨てられる」と厳しく指摘されています。
 これを受けてか、9月15日に金融庁試算を発表しました。人口減少などの影響で2025年には地銀の6割超が赤字になるとの見通しです。これには「現状の営業では利益を上げられなくなるのでビジネスモデルを見直すべき」との示唆が含まれています。
 銀行が企業の本業支援を通じて価値を生み出す存在へと回帰できるかが問われています。カネも出すが知恵も出す情報サービス産業への進化が求められているのだと思います。