行列客へのサービスも一流の矢場とん(名古屋)

 ここは行列文化の街ではないか。そう思わせるほど、名古屋ではそこかしこに行列が見られます。人気の飲食店や菓子店は特にそうです。矢場とんも例外ではありません。みそかつといえば矢場とんというほどのブランド店ですから、その行列は半端ではありません。しかしそこは業歴65年の老舗だけあり、お客がストレスを感じないように工夫しています。
 矢場とんでは、ホームページのトップに店ごとの待ち時間をリアルタイムで表示しています。これで混雑状況を確認できるようになっています。ほとんどの時間は「すぐにご案内できます」と表示されており、昼や夜のピークタイムに「約10分」などと表示されます。
 実際に、最も混雑されると思われる土曜日の昼12時半に矢場とん本店に行ってみました。20人くらいの行列ができており、そこに並ぶこと17分でカウンターに案内されました。鉄板ひれとんかつ定食(1,785円)を注文すると、3分で料理が出てきました。さめないように鉄板に乗せたとんかつですが、熱すぎはせず、食べやすいものでした。くどくない薄めのみそだれ、柔らかい上質の肉を使ったひれかつ、底にしいたキャベツがバランスよく、どんどん食が進みました。会計をして店を出たのがちょうど13時。混雑のピークと思われる時間に行っても30分で食事が済みました。
 席についてから料理を注文して出てくるまでが3分という驚異的な短さでしたが、これは注文前から料理を作り続けているからです。基本メニューは、わらじとんかつ定食(1,680円)と鉄板とんかつ定食(1,785円)の2つに絞り込まれています。限られたメニューですから、混雑のピーク時には注文を聞く前から作り始めることができます。
 配膳、下膳、会計の手際も良く、一流のとんかつ料理店らしい客さばきでした。行列はできるけれども、お客にストレスを与えない。これが矢場とんの隠れたすごさではないかと思いました。