コメダ珈琲店に見る飲食店の優れた生き残り策

 7月26日放送のカンブリア宮殿で、コメダ珈琲店名古屋市)のユニークな経営が紹介されました。コメダは、1968年に開業し、今や全国に400店舗以上展開する喫茶店のFCです。ドトールコーヒースターバックスとは明らかに違う経営戦略で店舗数を伸ばして注目されています。
 飲食店にもターゲティングと差別化は必要ですが、コメダはこの2つが優れています。ターゲティングでは、地元のお年寄りを見事に取り込めています。そのため平日の午前という、喫茶店にとってのアイドルタイムにお年寄りが席を埋め尽くしています。お年寄りを引き付ける鍵は、居心地の良さをアピールすることです。ゆったりとした店内の造作、明るい内装、快適なソファ、豊富な新聞・雑誌類などで、お年寄りたちは心地よさを感じ、長居したくなります。
 喫茶店にとってお客を長居させることは回転率を下げるのでタブーとされていますが、コメダは逆に長居大歓迎を差別化のポイントとしてアピールすることで地元のお年寄りをリピーターにしました。一見、回転率を下げるリスキーな取組みに見えますが、実はこれにより平日の稼働率が上がり、利益率の向上につながっています。
 コメダが提供する商品は、コクとボリュームのあるコーヒー、朝の時間帯に無料で付くトーストとゆで卵、巨大なデニッシュにソフトクリームを盛り付けたシロノワールなど、名古屋ならではのデラックス感を売りにしています。しかし、人気の秘密は別なところにあります。「我が家で過ごすような快適な時間」を売り物にすることで、顧客満足度を引き上げているのです。
 コメダには、寝巻姿で朝食を食べに訪れる老夫婦もいます。お客が気軽に店に入りやすいように、店員の制服も普段着に見えるシンプルなものにしています。そして、嫌いな食材を抜いたり、食べやすいサイズに切ったりと、お客に合わせたオーダーを受けます。これがお客の心をつかみ、「コメダは我が家のダイニングルーム」という親近感を与えるのです。地元の人々の生活の一部となっているところがコメダの真の強みなのだと思います。
 喫茶店と感じさせずに、我が家の一部であるように思わせる。こうしたサービスを提供できるかどうかが、これからの飲食店の経営に求められるでしょう。