『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(by正垣泰彦)

 需要の縮小と競合の激化で国内の飲食店は厳しい経営状況にあります。どうすれば売れるのか、どうすれば利益が出るのか、どうすれば固定客がつくのか、どうすれば競合を凌げるのか。悩みは尽きません。そんな飲食店経営者に参考にしてほしいのが、(株)サイゼリヤの創業者で会長である正垣泰彦氏が出されている著作『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経ビジネス人文庫)です。
 正垣氏のキャリアは壮絶です。1967年に千葉県市川市青果店の2階でイタリア料理店サイゼリヤを開業したものの悪立地のため深夜営業を導入してもお客はさっぱり来ず、開店7カ月目にお客同士の喧嘩で石油ストーブが倒れて店舗が火事になります。廃業か移転しての再開かを考えた挙句、母親から「今の場所が最良の立地と思ってがんばるべき」との説得を受けて元の場所での再会を決意します。思い切って料理の値段を相場の7割引まで下げたところ、猛烈にお客が集まり、客数が1日600~800人に跳ね上がり、多店舗展開への道が開けました。今年(2019年)7月で店舗数は1,500店舗を達成しました。
 「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」という正垣氏の言葉は、「自社の料理を自分がおいしいと思っていては、企業は成長しない。お客様がおいしいと思うかが先にある」という意味であり、顧客目線の重要性を説いたものです。どの経営者も自社の商品やサービスには自信がありますが、お客様に受け入れられなければ意味がありません。「売れているのがおいしい料理」という逆説的に聞こえる表現は、顧客目線を失ってはならないという厳しい教えなのです。
 顧客が求めるものを考え抜き、提供できるよう実践する。サイゼリヤの成功は、経営の基本に忠実であることの大切さを気づかせてくれます。