競合が激しいために価格破壊が進む美容業界にあって、非価格経営を実践する模範的な美容室があります(坂本光司『もう価格で闘わない-「より安く!」は誰も幸せにしない』あさ出版)。
(有)トランスフォーム(東京都中野区)は、オーガニック製品の使用にこだわり、平日も満員、リピート率90%を実現した自然派美容室です。客単価は14,000円強と、業界平均の倍以上を実現しています。
同社の魅力は、「より美しく、より健康に、皆が幸せになれる空間」を経営理念として、シャンプーから毛染めまでオーガニック製品(天然100%ヘナ&ハーブ)を使用し、化学物質入りの液剤を一切使用していないことです。これにより、アレルギー体質に悩む女性の心をつかみ、稼働率は90%となり、近隣県から新幹線で毎月通うお客も現れるほどの人気店になりました。人材の確保も容易になり、社会保険の完備、勤務時間の短縮、産休・育休の選びやすさなど女性スタッフが働きやすい態勢を整備できるようになりました。
かつては同社も他の美容室を同じように化学物質入りの商品を使った経営を行っていました。社長の酒巻大智さんが、近所の不燃ごみ処理場から排出される化学物質で健康を害したことから、お客様には化学物質を使わない商品を提供したいとの思いを持つようになり、自然派・無化学の店への転換に踏み切りました。
お客様と従業員の幸せを願う強い気持ちが非価格経営を実現した同社の取組みは、多くの小企業の参考になると思います。