現実的な少子化対策を実践する美容院(鳥取県)

 年頭に国が少子化対策に本気で取り組む姿勢を打ち出しましたが、民間でも自主的に取り組む動きがあります。鳥取県鳥取市でオーガニック白髪染め専門美容院を3店舗経営する(株)美染です。育児と経済的自立の両立に悩む女性を支える企業になることを目的として、山本紗代さんと上住潤子さんが2017年に創業しました(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.172 P16-19「女性の経済的自立を支える」)。

 山本さんと上住さんは従姉妹です。美容師でシングルマザーだった上住さんが、故郷の鳥取に帰って創業しないかと山本さんを誘ったことが、始めるきっかけでした。鳥取県は人口1万人当たり理容・美容所施設数が40.97と全国平均29.46を大きく上回る美容院の激戦区です。特徴を出すために、白髪染めの専門店としてスタートすることにしました。低価格、シャンプーマシーンで毛穴汚れをスッキリ落とせる、当日予約を断らないという利点が評判となり、県内に3店舗を構えるようになりました。

 事業の拡大に伴って休眠美容師の採用を増やし、同社は9名で切り盛りするようになりました。全員が女性です。育児中の人が多いため、フルタイムでもパートでも働けるようにしたり、有給休暇を取りやすい雰囲気をつくったりしました。そのため育児中の女性が無理なく働くことができ、離職率はゼロです。

 SDGs活動にも力を入れています。カラー剤の使用済みアルミチューブを買い取ってもらい、その資金で地元の小学校にSDGs関連の本を寄付しています。鳥取こども学園でボランティアカットを行ったりもしています。

 鳥取県「子育て王国」を標榜して子育て支援策の厚さをPRしていますが、それを活用しながら自ら活動する企業が(株)美染です。山本さんたちの活躍が他県にも同様の取組みを増やし、全国規模の少子化対策へと拡大することを期待しています。