「40歳定年制」は画期的な創業促進策

 内閣官房内にある国家戦略室フロンティア分科会は、2050年においても繁栄する日本を実現する一つの施策として「40歳定年制」の導入を提言しています。これは、労働力の流動性を高めることを目的とした施策ですが、実は創業促進策として非常に有効です。
 日本政策金融公庫新規開業実態調査では、創業者の平均年齢は40歳前後です。実社会で勤務経験を積んで創業に踏み出す年齢が40歳ということですが、最近は創業が活発ではありません。それならば40歳を定年として、第二の人生を創業して切り開いていくことにすれば、必然的に創業は活発化するでしょう。特に大企業で導入されれば、優秀な人材のスピンアウトが促進され、ベンチャー企業も多く現れることでしょう。
 問題は「40歳定年制」が実現可能なのかということです。もちろん、すべての企業が導入するわけではなく一部の企業に限られるわけですが(そうしないと40歳超の労働者に働く場を提供できません)、実際に導入する企業は、社長を含めて全員が40歳定年にしないと公平感を保てないでしょう。しかし、社員全員が40歳で定年を迎える企業というのはあり得るでしょうか。
 分科会の提言では、再雇用の可能性も示唆していますが、実務能力がピークを迎える40歳で再雇用されて労働条件が下がるというのは、一般には理解しにくい話です。となると、40歳でその会社を退職しなければなりません。勤続年数が18年程度で労働者が納得する職場を実現できるのか。大企業の子会社ならできるでしょう。そこで40歳まで働いて、親会社に就職するか、転職するか、独立するかを選択することにすればよいわけです。
 「40歳定年制」も必要という社会的コンセンサスを作り、大企業が子会社などに導入することで、労働力の流動化が一気に進み、創業も促進されるでしょう。画期的な提言だと思います。