中小企業白書が示唆する小企業の意義

 今年の中小企業白書は、小企業(小規模事業者)に光を当てて政策の方向性を分析しています。特に興味深いのは、起業・創業の章で、「地域需要創出型」と「グローバル成長型」に分けて企業を考えているところでしょう。ここではグローバルに活躍して成長する企業だけでなく、成長性が低い企業についても地域需要を創出する意義があるものとして認めています。これは重要なパラダイム転換だと思います。
 オイルショックを機に日本経済は成長の壁にぶつかり、無理に成長を求めた結果、80年代後半にはバブルになってしまいました。90年代以降は、40歳前後の働き盛り層が減少傾向にありますから、成長を志向してもなかなかできない泥沼状態に陥っています。
 目に見えた経済成長を期待できない今、どうしたらよいのか。小さな需要創造をこまめに行っていくというのも地味ながら一つの解答でしょう。その役割を果たすのが小企業なのです。
 大企業の活躍ばかりがマスコミに喧伝され、若者たちにとって大企業へ就職することが人生のゴールであるような常識が形成されていますが、そうした価値観を変えるイノベーションが求められています。スモール・イズ・クール。白書が示唆するパラダイム転換は、日本社会に大きな変革をもたらすポテンシャルを秘めていると思います。