小企業の意義は「挑戦」すること

 我が国の小規模企業の数は1999年の423万者から2016年の305万者へと激減しています。驚くべきスピードで減少していますが、この動きを食い止めるか推し進めるかについては議論が分かれています。小規模企業白書中小企業庁)からは「かわいそうな存在」、デービッド・アトキンソン(伝説のアナリスト)からは「生産性が低く、整理統合すべき存在」と、小企業は呼ばれています。そんな小企業の意義はどこにあるのでしょうか。

 小企業の役割は、「成長の源泉」「多様なニーズの受け皿」「経済ショックの緩衝材」「地域活性化の担い手」と言われます。どれも過大な賛辞に思えます。実態としては人口の減少と、低収益性による後継者難で小企業は減少しています。

 経済が縮小しながら充実する「縮充」に向かう今の時代、小企業の減少も自然であり、阻止しようという方に無理があります。無理を通すなら、小企業の低収益性を改善しなければなりません。「儲かる小企業」はどうしたら実現できるでしょうか。

 経営理念を確立し、経営計画を立て、PDCAを回して資金繰りを安定させることが経営の王道です。小企業にこれができたとしても、収益性を向上させられるかどうかは保証できません。多くの支援機関が小企業の経営改善に尽力していますが、その苦労は波打ち際で砂の城を築くように、作っては消えの繰り返しで残る小企業はわずかしかありません。それでも希望はあります。

 小企業は「挑戦する主体」です。変化する時代、厳しい環境に対して、常に先んじて挑戦します。小企業が挑戦するからこそ、新しい時代が切り拓かれ、地域が元気になります。基盤が脆弱で規模の経済性が働かないため、「かわいそう」「生産性が低い」という批評は当たっていますが、本質を突いてはいません。

 小企業の本質は「挑戦」です。挑戦するから成長し、多様なニーズを捉え、経済ショックに強く、地域を活性化します。挑戦の裏には弱さの自覚があります。弱いから強くなりたいと願い、無謀とも思える挑戦をするのです。その志と行動がある限り、小企業は常に輝き、人を惹きつけ、地域を元気にする存在であり続けるのだと思います。