ITを活用できない小企業

 全国的に事業所数の減少が続いています。特に小規模企業の減少が顕著です。経営基盤が弱く、企業体力もない小企業が、縮小する需要と激化する競合に耐えかねて、市場から退出するという構図ができています。稼ぐ力(生産性)を高められない企業は、市場から容赦なく排出される展開が生じています。
 中小企業白書などでは、稼ぐ力を高める手段としてITの活用を挙げています。ITの活用は情報が流通する効率を上げるため、より多くの対象へアクセスでき、連絡時間を大幅に短縮することができるからです。しかし、ITの利便性は、小企業よりも大企業に恩恵をもたらしたようです。
 ブランド力のある大企業のホームページは、これまで吸い上げられなかった細かい需要を吸い上げることを可能にしました。社内での情報連絡が効率化されたことで、意思決定が素早く伝わるようにもなりました。仕入先や資金調達先への連絡も迅速になりました。ITの活用により、大企業の生産性は向上しました。
 小企業がITを使って情報発信しようとしても、ブランド力がなければ顧客予備軍には伝わりません。社内の連絡も口頭で伝えた方が速いということもあります。
 1990年代にITが普及しつつあった頃、これからは情報格差が解消されるので小企業の時代がやってくると言われました。しかし、実際には逆の状況が生じています。小企業のIT活用には、もう一手間かける必要があると思います。