人が主役の無人書店(奈良市)

 Amazonなどのネット書店の勢いに押されて、まちの書店は苦境が続いています。そのなかで、生き残り策のヒントとなる書店が、奈良市の旧市街地ならまちにあります(日本政策金融公庫調査月報No.163 P42-45)。

 「Naramachi BookSpace ふうせんかずら」は、(有)ならがよい(平田幸一社長)が経営する会員制の無人書店です。営業時間中も施錠されています。ホームページでメンバー登録した会員が、専用IDで解錠して入店し、ほしい本を見つけたらキャッシュレス決済用機器を使って支払いをします。店舗の開閉と会計を機械化したことで無人店舗を実現しています。店内にはセルフカフェのスペースがあり、ドリンクでくつろぎながら購入した本を読むことができます。営業時間は7時30分~22時と長くとっています。

 「ふうせんかずら」の見た目は書店ですが、実態はフリーマーケットです。置かれている2,000冊以上の新刊や古本は仕入れたものではなく、8人のブックオーナーが出品したもので、売上は全額ブックオーナーに入ります。運営会社は本棚のレンタル代で収入を得ています。手作りのおむすび販売やイベント開催もします。機械化できるところは機械に任せ、人ができるところに力を入れています。

 無人化で人のぬくもりを浮き立たせる経営が、ファンの心をつかんでいます。コロナ後の小企業経営のヒントを与えてくれます。