グラミン日本が成功するための鍵

 日本の貧困問題を解決するために今夏、立ち上がるグラミン日本ですが、克服しなければならない課題があります。
 小口融資を通じて起業・就労の機会を提供するビジネスモデルですが、既に日本には様々な小口融資の仕組みがあります。政府系金融機関日本政策金融公庫(国民生活事業)による小口融資や、民間金融機関によるカードローン、消費者金融によるローンなどです。これらとの差別化が必要になるでしょう。
 もう一つは、グループ融資を成立させるためのグループを形成することです。5人で1グループを作って融資を受ける仕組みですので、結束できる5人が集まらないといけません。個人主義が蔓延している日本で、グループを作れというのは簡単ではないでしょう。
 相対的貧困にある人が15.6%いるというのは、等価可処分所得が122万円未満の人がそれだけいるということです。等価可処分所得とは、家計の可処分所得を世帯員数の平方根で割ったもののことです(規模の経済性を考慮しています)。そのため、女性の1人暮らしなら貧困線は122万円、母子家庭で子供が1人いる2人暮らし世帯は173万円、子供が2人いる3人暮らしなら211万円となります。これは、コンビニのアルバイトでも稼ぎ出せる額です。
 我が国で貧困にあえいでいる人は、コンビニのアルバイトもできていないレベルの人ということになります。そうした人をコンビニで働けるレベルにするのは、簡単に見えるようで、実際には難しいでしょう。相当に丁寧な伴走型の教育が必要になります。
 経済的な豊かさを達成した我が国で、20万円という小口融資の額には、それほど意味はありません。むしろ、グループメンバーとのつながりを信じて、他人のためにがんばるという意識を身に付け、社会の一員としての自覚を持てるようになることに意義があると思います。そうした人間教育を真剣に行うところにグラミン日本の成功の秘訣があるでしょう。