事業承継の壁を破る支援方法

 事業承継支援が政策課題として最重要だという声が各所で聞かれます。高齢化による廃業が進むことで地域の衰退が著しいため、廃業を阻止する目的で事業承継を進めるべきとの議論が出ているのです。しかしこれは逆立ちした議論です。
 そもそも承継するに足る事業であれば、事業承継は問題になりません。承継しても儲からない、長続きしないと思われるから、承継しようという人材が出てこないわけです。経営者の子供や従業員が継ぎたがらないのはそのためです。身近で見ている人が承継しようと思わないのに、見ず知らずの人材を引っ張ってきて承継させようというのは難しいでしょう。
 企業経営者やその関係者が会社の価値に気づいていないケースがあり、その場合に事業承継を支援する意義があるのだという意見もあります。しかし当事者でさえ気づいていない価値に、第三者が気づくことができるでしょうか。
 事業承継を支援するには、その事業をつぶしてはならないという地域の声を集めて事業継続の必要性を判定し、その事業を承継しても良いという創業希望者を募って試験的に承継させてみる手があります。それでうまくいかなければその事業は潔く廃業させる。事業継続のラストチャンスに創業希望者をあてるという、事業承継支援+創業支援の複合支援を考えてはどうでしょうか。
 創業支援がうまく進まない理由は、経験・人脈や資金がないのに創業したいという人が多いことです。準備不足といってしまえばそれまでですが、そうした人たちをうまく創業させるために、事業承継を活用するという方法は有効ではないかと思います。