白書で紹介された小企業の事業承継(米子市)

 後継者の不在が原因で廃業する企業が後を絶ちません。そうした廃業を阻止するために事業承継支援が大きな政策課題になっています。
 「事業承継は企業規模が大きくないとできないのでは」「人口の少ない地域では難しいのでは」と思われる人も多いようですが、4月21日に中小企業庁が公表した小規模企業白書では、地方の小規模企業の事業承継事例が6つ紹介されています。5番目の事例は、人口最少県である鳥取県米子市にある漬物製造業者です(P283 事例2-2-5)。
 1921年創業の(有)福島商店(古漬け製造業者)は、知り合いの個人事業者である丸山商店(浅漬け製造業者)からの事業承継を受けました。丸山商店の「大山高原漬物」のブランドと販路を引き継ぐことが目的でしたが、同商店の浅漬けの技術と7名の従業員の雇用を守ることができました。この事業承継は、仲介にあたった山陰合同銀行が県の事業引継ぎ支援センターにつなぎ、とっとり企業支援ネットワーク(県が組織する地元の経営支援機関と金融機関のチーム)から支援されたことでうまくいきました。人口最少県であるがゆえに地域の協力体制が堅固な鳥取県ならではの事例といえるでしょう。
 地域が一丸となれば、小企業でも積極的に事業承継を進め、地域の技術と雇用を守ることができる。この事例は人口の少ない地方にも希望があることを教えてくれます。