知事本の味わいが深くなる読み方

 鳥取県平井伸治知事が著した『小さくても勝てる 「砂丘の国」のポジティブ戦略』が県内で売れています。
 ダジャレで全国区となった知事が、どれだけ住民目線の政治を行ってきたかが克明に記された本書は、人気漫才師が名実業家だったようなギャップ感が読者を酩酊させるすごい本です。そのまま読んでも楽しめますが、さらに面白く読める読み方を提案したいと思います。この著書を「人間中心の政治とは何か?」という問題意識を持って読む方法です。
 資本主義が全世界を席巻し、人間よりもお金の方に価値があるような価値観の倒錯が起きている現在、人間に価値を置く政治が求められています。「高齢者介護」「子供の貧困」「待機児童」「高齢者・障害者・女性雇用」などを解決する政治とはどういったものなのか。これらの問題への具体的な解決策を提示しているのが平井知事の著作です。
 高齢者と子供がふれあう「共生型ホーム」整備、町内の子供の保育料無償化、家庭内保育への現金給付、自然とのふれあいを学ぶ「森のようちえん」整備、県庁での女性幹部の積極登用などは、地域課題への平井知事のソリューション提案なのでしょう。
 こうした結果として、鳥取県は女性のストレスオフ指数が全国一という実績が上がっています。都会で保育施設の不足に嘆く女性たちが本書を読めば、鳥取県で生活したくなるでしょう。
 読者が誰であれ、「人にやさしい鳥取県」を本書から読み取ってもらえると幸いです。