消費低迷をもたらす『低欲望社会』(by大前研一)

 内閣府が8月17日に発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は、前期比0.4%減(年率換算で1.6%減)となりました。個人消費と輸出の低迷が原因で落ち込んだといわれていますが、かなりショッキングな数字です。地方創生の流れを受けて全国の自治体で春先にプレミアム商品券が次々と発行されたのに、消費の伸びにあまり寄与しなかったということになるからです。なぜ消費が思うように伸びないのでしょうか。
 ひとつには、人口の減少が猛スピードで進んでいることがあります。少子化が進行する一方で、高齢者を中心に平成25年から毎年127万人以上の人が亡くなっています。山陰の人口(鳥取57+島根69=126万人)を上回る死亡数です。県が二つ消滅する勢いで国民が亡くなっているわけですから、マクロの消費が伸びないのは当然かもしれません(注:出生数から死亡数を差し引きした人口の純減は平成25年23万人、26年25万人)。
 もうひとつ考えられる理由は、カリスマ経営コンサルタント大前研一氏が主張する『低欲望社会』の出現です。大前氏は、今の消費減退は、日本が総じて消費意欲のない国になったことによるものだといいます(大前研一低欲望社会 「大志なき時代」の新・国富論小学館)。路頭に迷っても生きていけるほど生存の条件が低くなったことや、バブル世代の親を見て育った反動から、若者の欲望が減衰する構造が生まれているということです。経済的な豊かさが頭打ちとなった現代の日本では、欲を持たない方が幸せに生きられるという合理的な判断が行われているのかもしれません。
 人口減少と『低欲望社会』の出現。これら未曾有の事態に即した政策対応が求められています。